産業観光受入施設の井上酒造と障がい者就労継続支援施設の株式会社シンシアリーがタッグを組んで、日田の酒米で、日田の酒蔵で、日田の人達が醸造した純米吟醸酒が完成しました。
(3月22日、井上社長にお話を伺いました。)
井上百合社長は、「この酒造りの相談を当社にしていただいたことが嬉しく、また、杜氏として、シンシアリーの皆さんの夢実現のお手伝いができることを大変嬉しく思っています。搾ったお酒は今、タンクに寝かせて澱を沈めています。この後、上澄みを引いて瓶に詰めたらシンシアリーさんでいよいよ販売です。満足いただけるお酒に仕上がっていますのでご期待ください。手搾りの酒粕は酵母由来の成分が多く残っています。お菓子にも挑戦すると伺い楽しみです。」
(3月23日、平川社長にお話を伺いました。)
シンシアリーの平川加奈江社長は、「我が社は、当初、金属加工、自動車部品の製造などを主業にしていましたが、障がいを持つ社員の方々の適性に合わせるため、農業も手掛けるようになりました。会社近くの水田が休耕田になっていたので、借り受けたのが始まりで、現在では3haの水田にまで拡大しています。お米の販売も順調になりましたが、お米を売るだけでなくお酒にできたらと思いが広がり、今回、井上社長に酒米づくりの相談と醸造の依頼、作業に携わる社員の受け入れをお願いしたところです。酒米づくりは、田植え、草取り、台風で倒れた稲起し、収穫など農作業は大変でしたが、酒米で最も大事な「心白」を見つけたときは感動でした。出来上がったお酒は、自社の店舗で販売します。そのために酒類販売の免許も取得しました。自分達で作った酒米が美味しい酒になる!皆さんに喜んでいただけることが社員の喜びとなり、そして誇りとなっていきます。この機会をくださった井上社長には大変感謝しております。搾り後の酒粕はお菓子などに加工できないかと、現在考案中です。」
お二人から別々にお話をお聞きしましたが、お二人とも言われていたのは、「地元で作ったお米で、地元の人達がお酒を造り、地元でお酒を売ることは、まさに6次産業です。夢がありますね。」同じ想いを持つ両社長が次に何を仕掛けるのか楽しみになってきました。
写真提供:㈱シンシアリー
(3月29日 お酒の瓶詰作業にお邪魔しました。)
井上社長「熊本市にいる私の酒造りの師匠に利き酒をお願いしたところ『米が硬く酒米として絶品。酒を利いただけで生産者の気持ちが伝わってくる。丹精込めて誠実に育てる姿が浮かびます。このような米質は奥が深い。井上さん、技術向上に励みなさい。』と言われ、新たな課題をもらいました。今回のように酒米を持ち込んで酒造りを依頼されたのは初めてのケースでしたが、社員も全面協力体制で頑張ってくれました。おいしいお酒が出来上がって一安心です。」と言いながら、気持ちはもう来年の酒造りに・・・。
今回の酒造り作業の指揮を執ったシンシアリーの平川智也専務は、「2月14日から毎日井上酒造さんに通いました。酒造りは初めてで、これまでは下請けの作業が主であり決められた製品を作れば良かったのですが、今回は酒米づくりからお酒になるまで全てに関わったので、喜びしかないです。今回のチャレンジが社員の自信になり、各自の夢実現につながっていくものと思っています。」とホッとした表情で話してくれました。
お酒が詰まった一本目の瓶が注入室からラインで流れてくると、歓声が上がっていました。次にラインの途中で青色の瓶に「夢かなえ」のラベルが貼られるとまた歓声が・・・。400本の瓶詰が終わり、井上酒造とシンシアリーが取り組んだお酒造りは完結しました。
日田の米で、日田の人々がつくりあげた「純米吟醸 夢かなえ」は、関係者の夢を叶え、また新しい夢を叶えるための出発点となったものと感じました。
お酒が取り持つ縁で始まった井上社長と平川社長のチャレンジ。第2弾に期待が膨らみます。